三月は深き紅の淵を
ここに一冊の本がある。
その本はごく小数部しか発行されなかったのと、
所有者に課せられた奇妙な理(ことわり)のせいで
幻の本と呼ばれていた。
ひとつ、作者を明かしてはいけない
ひとつ、コピーをとってもいけない
ひとつ、他人に読ませる場合は…一晩しか貸してはいけない
そんな不思議な本『三月は深き紅の淵を』を巡る
4つの短編集から成る小説。
ストーリーとしてはミステリ形式になっており、
確かにそっちの意味で十分面白いんですが…
どちらかというと主題は
「本を読む自分」「本を書く自分」
というのを自覚させられる、
本好きの為の本だと思った。
『生まれて初めて開いた絵本から順番に、
自分が今まで読んできた本を全部見られたらなあ、
って思うことありませんか?』
『日本の社会自体、本を読む人間に冷たいんですよ』
『今でも人間が小説書いてることが
信じられない時があるもんね。
どこかに小説のなる木かなんかがあって、みんなそこから
むしりとってきてるんじゃないかって思うよ』
『物語は読者のために存在するのでも、
作者のために存在するのでもない。
物語は物語のために存在する。』
なかなか印象的な言葉ばっかりじゃあないですか。
なーんかこれ読んでたら読書年表でもつけたくなるなあ。
とりあえずこれで恩田陸デビューは果たしたので
今度図書館に行って色々借りてこようかな。